き方にヒロイズムを描き出している。汚れをいとわないとか、古くさい結婚の形にしばられない感情の冒険とかいうことの現実をみると、結局は社会の経済生活の崩壊による女性の男への寄生的生活の合理化であり、広汎な売娼生活の合理化だということが分ります。
五 人民的なオーケストラ
何故こんなにしつこく社会と文化の今日のありようについて、わたしたちは追求せずにいられないのでしょう。わたしたちの心にあるこの抗議と抵抗の動機は、人間らしい、美しい、瑞々しい人生をもちたいという痛切な願いからです。わたしたちみんなの心にこの訴えがあります。わたしたちは、ただ一度しかない人生をいとおしみます。このやわらかい心。やわらかい心が苦しんで訴えるさけび。さけばずにいられない心がむすびあって結集した力。これが現代のわれわれのモラルであり、抵抗です。わたしたちの生きてゆく感覚そのものがより美しいものを求めて社会悪に抵抗する。感情そのもののせつない動きが、いなずまのように社会の価値判断の急所を射つらぬいてゆく。そのような殺しても殺しても生きる命としての抵抗力、強い生活感覚、それこそが、きょうの歴史を生き
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