かずにはいられない人間的な欲求があるのです。
 中国での人民革命の成功は、一部の人々を性急にしています。日本の人民的文化の下地の具体的条件をとびこして、せっかちに、まるで新しい「新しい文化」の発見にあせっているところもある。だが、現実に日本にあらわれている新しい文化の動きは、いろいろのところにいろいろの段階と形とをとって、あるときには旧いものとまじりつつあらわれ、しかもファシズム反対というつよい統一的な線でつながれてゆこうとしているのが実際です。別の星から飛んで来て生えている種はない。「知識人の会」の活動ぶりと「日本文化をまもる会」の活動ぶりとは、いつも必ず同じとはいえないでしょうが、それぞれちがいながら窮極の民主主義擁護と平和のまもりでは一つの流れにとけ合ってゆきます。人民層の多様さに応じた多様な歴史的善意が、それぞれの必然によって湧きたち、そのものとしてうけ入れられ、結合され高められつつあります。個人の善意がそのような形で結集しよりつよい形で生かされようとしています。
 この新しい段階の多様な面白さ、内部に動きをもった統一というものが、ファシズムに対する統一戦線として、十分自覚され
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