新学期に際してだけの季節的行事であってはならないと思います。今日二・二六の事件を戦争を欲しなかった青年将校[#「戦争を欲しなかった青年将校」に傍点]の行動であるとか、農民大衆の窮乏にふるいたった青年将校たちの行動であるとかいう二・二六記録が発表されている事実と鋭くにらみ合わされる必要があります。
人民的な文化建設をいうとき、これまではいつも、文化現象の社会的基盤の分析がまず行われてきました。田辺哲学の批判もそこまではきている。太宰治の文学についてそこまではいわれている。「しかし」というところが一般の感情のうちに残っていて、太宰もよまれ田辺も崇拝者をもっている。この「しかし」こそ微妙です。赤岩栄氏の存在はいかにも時代的であり過渡的で、この「しかし」の心理に深い連関をもっています。民主的文化確立の道は、この社会的基盤の分析という段階から既に文学そのものの創造によって、人民の哲学そのものの確立によって、新しい知性と美の流露によって、知的に心情的に、「しかし」の谷間まであふれてゆかなければならない段階にきていると信じます。既成文化の否定から、新しい文化の具体的な誕生による肯定の面へまででてゆ
前へ
次へ
全33ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング