かずにはいられない人間的な欲求があるのです。
 中国での人民革命の成功は、一部の人々を性急にしています。日本の人民的文化の下地の具体的条件をとびこして、せっかちに、まるで新しい「新しい文化」の発見にあせっているところもある。だが、現実に日本にあらわれている新しい文化の動きは、いろいろのところにいろいろの段階と形とをとって、あるときには旧いものとまじりつつあらわれ、しかもファシズム反対というつよい統一的な線でつながれてゆこうとしているのが実際です。別の星から飛んで来て生えている種はない。「知識人の会」の活動ぶりと「日本文化をまもる会」の活動ぶりとは、いつも必ず同じとはいえないでしょうが、それぞれちがいながら窮極の民主主義擁護と平和のまもりでは一つの流れにとけ合ってゆきます。人民層の多様さに応じた多様な歴史的善意が、それぞれの必然によって湧きたち、そのものとしてうけ入れられ、結合され高められつつあります。個人の善意がそのような形で結集しよりつよい形で生かされようとしています。
 この新しい段階の多様な面白さ、内部に動きをもった統一というものが、ファシズムに対する統一戦線として、十分自覚されなければならないと思います。文化と政治との関係の進歩した具体的な表現として、もっともっと親愛されていい。文化・文学における政治の優位性ということを、たたかいの年月を通じてまじめに体験し、理解している人は、既成の学問の諸分野において、民主的創造、民主的な学問の達成そのものが闘われなければならないことを痛感しています。学問を愛する多くの学生が大学法案に反対し、さまざまに政治的に行動する場合にも、学問の道そのものにおける勝利の意義が忘れられたことはなかろうと思います。

        四 頽廃への抵抗

 学生運動の分野で女子学生の活動はどんなものでしょうかときいたらば、編集部は次のように答えられました。「男の学生に比較すれば量において少いし、人間的生長といった面でも遅れているように見受けられます」と。わたしは正直なところこの御返事の気分に不満なのです。日本の女学校教育は特別なものであったから、共学がはじまってまだほんの僅かしかたたない今日、女子学生が男の学生に比較してあとにいるという事情にも無理もないところがあります。日本の民主化されていない家庭では、女の負担が実に多い。それでもまじめな
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