う観念を遵守すれば、国防婦人会の働く形体にしろ現実にそれとは対置されたものである。内を守るという形も、さまざまな経済事情の複雑さにつれて複雑になって来ていて、人間としてある成長の希望を心に抱いている男のひと自身、すでに、いわゆる女らしく、朝は手拭を姉様かぶりにして良人を見送り、夕方はエプロン姿で出迎えてひたすら彼の力弱い月給袋を生涯風波なしの唯一のたよりとし、男として愛するから良人としての関係にいるのか月給袋をもって来るから旦那様として大事に扱われるのか、そのところが生活の心持で分明をかいているというような女らしさには、可憐というよりは重く肩にぶら下る負担を感じているであろう。
そんな心持で安心しては過せない自分の心を、多くの若い女のひとたちは自覚していると思う。人間として成長のためには、本当に愛情を育ててゆけるためにも、社会生活のひろさの中に呼吸して職業をも持って結婚生活をしてゆきたいと思う。そういう希望も現在では女の本心から抱かれていると思う。ところが、職業の種類で結婚のあいてにめぐり合うことがむずかしくなったり、結婚生活と職業とが労力的に両立しがたかったりして、そういう困難にぶ
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