新しい船出
――女らしさの昨日、今日、明日――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)紫陽花《あじさい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年二月〕
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女らしさというものについて女自身はどう感じてどんなに扱っているのだろうか。これはなかなか微妙で面白いことだし、また女らしさというような表現が日常生活の感情の中に何か一つの範疇のようなものとしてあらわれはじめたのは、いつの時代頃からのことなのであろうか。そういう点にも興味がある。
万葉集を読んだ人は、誰でもあの詩歌の世界で、実にすなおに率直に男女の心持が流露されているのを知っているが、あのなかには沢山の可愛い女、美しい女、あでやかな女を恋い讚えた表現があるけれども、一つも女らしい女という規準で讚美されている女の例はない。これは本当に心持のよいことだと思う。あの時代、女と男との生活は原始ながら自然な条件を多くもっていたために、女は美しい女、醜い女、賢い女、愚かな女というようなおのずからな差別をうけながらも、女らしいという自然性については、何も特
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