は原子力よりももっと殺戮力のつよい放射線の雲をつくることが発明されたなどと、得意そうに報道しました。心あるアメリカの人々、平和を愛するアメリカの女性たちにとって、あんな記事は腹立たしいものだろうと信じます。愛する自分の国の科学力の発達が、人畜を殲滅する能力などという点でほこられるとしたら、それは、よろこびよりも苦痛と恥辱を感じさせるのが自然です。
 では、どうして、日本の新聞は、そういう誇るべからざる誇りを、毒々しく報道したりするのでしょうか。日本の若い女性が、心の目を見ひらいて理解しなければならないことがあります。それは、日本のなかには、決してファシズムと軍国主義の思想が根だやし[#「根だやし」に傍点]になっていないということです。
 ポツダム宣言を受諾した表面上、日本の民主化は、政府が世界に向って義務づけられた仕事です。けれども、みなさまは、どうお思いになりますか? 日本の権力者はしん[#「しん」に傍点]から民主的になろうと努力しておりますか。武装解除した日本として、最後の正義として絶対平和のまもりてとして立つ決心をしているとお思いになりますか? わたしは、これに対する答えを、みな
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