かれたとき、幾人のかたがイエスとお答えなさるでしょう。ほとんど大部分のかたは、母のいとしさ、母への思いやりいたわりとは別に、これまで日本の女がおかれて来た生活の現実を、重くおそろしいものに見ていられるのが事実でしょう。母はほんとに尊敬します。ある意味で実にえらいとも思う。けれども、わたしたちの人生は、もっと別なものであるべきだと思います。母たちのことをしみじみ思えば、母への愛のためにも、わたしたちはもっとちがった人生をくみたててゆかなければならないと思う。私は、現実に幾度もこういう話題について語る若い方々の意見をきいております。
 現代の世紀には、世界じゅうの女性が、それをきらっている一つの言葉があります。それは「歴史はくりかえす」という言葉です。現代の世界じゅうの女性にとって、「歴史はくりかえす」という一つの言葉は、次のようないくつかの質問となります。

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一、あなたは、また戦争がほしいですか。
二、あなたは、あなたの姉や先輩たちがそういう経験をして来たように愛人や良人を失いたいですか。
三、あなたがたは、未亡人が御希望ですか。
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