な思いがあるでしょうか。この間から、わたくしはたびたびこういう不安をききました。やっと家のものを説得して専門学校は出たけれども、出てから先の生活を考えると、何ともいえない心持がして来る、だって、その先にある生活は、もう大体わかっているんですもの、と。そういう述懐をもっている方は、きょうの会に来ていらっしゃる方々の中に一人もないでしょうか。女学校を卒業する人からの手紙で、一番心痛の種になっていることは、もっと何か勉強したい自分の心と、お嫁入りということだけを先に見ていて、洋裁でも稽古していればそれで十分だと考える親たちとの意見のくいちがいです。この二つの悩みのどっちをとってみても、きょうの若い女性がどんなにゆたかな進歩した人生を欲しているかという事実と、反対に、日本の社会の現実はまだなかなか若々しくどこまでも伸びようとする女性のねがいの枝を撓《たわ》める状態におかれているという現実を語っていると思います。
 きょうの若い女性に出あって、一つ、きわめて率直な質問をいたします。あなたは、あなたのお母さんが生きていらしたとおりの女の一生を御自分でくりかえして見たいとお思いですか、と。――そうき
前へ 次へ
全12ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング