に傍点]がいつ平和の保護を求め、それは可能であろうかというようなおろかな平和論をもっていただろう。日本だけ[#「日本だけ」に傍点]が、戦争を拒否しているのではなくて、世界各国数十億の人民が平和をもとめている、という重大な現実[#「現実」に傍点]を作者は忘れている。国際平和会議と各国の平和を守る会は、日本にも連繋をもっている。原子兵器反対のアッピールは、世界の人民の良心にとって現実[#「現実」に傍点]の問題なのである。それは観念ではなくて、こんにちの世界人民の実行となっている。空想[#「空想」に傍点]ではなくて、きわめてつよく表示されている歴史的意志である。アジアにおいて、限りない権限をゆだねられている一人の老将軍が、朝鮮の戦線に原子兵器を使用するかしないかを決定するという世紀の絶壁に立たされたとき、彼にノーと言わせる支柱となり、彼を彼の属す国家の人民からさえも世紀の戦争犯罪人とされることから救ったのは、朝鮮はもとより世界と日本とにある、現実的な平和への意志である。平和に対するこのようなおそろしいほど具体的な現実[#「現実」に傍点]を、石川達三という作家が見おとしている現実[#「現実」に
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