この世界の現実に、日本の人民である婦人の善意として、プラスをもって働きかける力とはなりにくい。
人類の歴史の発展には、それぞれの時期の核がある。その核が前進させられて社会の歴史はすすむ。このことは、婦人運動史がよく示しているし、婦人参政権運動史が、あからさまに語っている。婦人が、一般論として男子と差別のない参政権を求めたとき、イギリスの婦人たちに参政権を与えたのは、保守党であった。日本で一九四六年、婦人参政権を与えたのも保守党であった。
しかし、日本の保守政党が、買弁の立場に立って人民の平和への念願と生活安定の欲求をうらぎるとき、参政権のある日本の婦人たちは、なお、保守政党へ投票しつづける義務をもつだろうか。そうでないことは明らかである。
わたしたちの日常をみたしている個々の現象の社会的な原因を理解し、そこに近代の階級社会の矛盾を見出すところに、婦人の社会的自覚がとどまっているだけでは、十分でないこんにちの世界になっている。階級のある現代の社会で、世界の最大多数者である人民が、こんにち、歴史のテーマとして、人民としての生存の根底をおびやかす戦争にあくまで反対することは、人民の現実
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