傾向がつよい。傍観しているつもりのその賭けの、最も直接の賭けものは、日本の人民自身たちであることをそれが事実であるよりもぼんやりとしか理解していないままに。――
きょうでも、世界は平和を求めているのだ。わたしたちは、このことを決して忘れてはならない。わたしたちが飢じく寒いからと言って、一部の人間だけは飽食して、他の大多数の人間に食物のない社会状態を、まともなものとして、肯定するひとがあるだろうか、火事がこんなに多い日本だからと言って、消火と防火の意味を否定するひとがあるだろうか。
平和に関してばかりは、どうしてか多くの人が、どこかに絶えず戦争があるのが地球の現実だのに、平和を言うのは観念的であり、非現実だというのだろうか。日本では、一九四五年八月からのち、一九四九年いっぱい、平和を支持して公然と語っていた人々が、一九五〇年にはいってから、六月二十五日朝鮮でのたたかいがひきおこされてから、自分が日本人として戦争に反対し、平和を欲しているものであることをはっきりさせる人が目立って減った。そして、いまなお世界平和を語り、そのために努力をつづけようとしている者は、こんにちの世界で最もおく
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