めてゆくと、その願いにつながって日本全体の幸福の問題が浮び上って来ずにはいない。日本の幸福ということを考えたとき、そこにはいや応ない世界の現実として、アジアにかかわる世界のそれぞれの勢力と日本との関係というものについても、思いをやらずにはいられない。
第二次世界大戦によって、日本のファシズム権力がわれわれの運命に加えた破壊力は激しくて、日本の女性が自分ひとりとしてはつましくのぞんでいる片隅の幸福さえも、世界歴史の大通りの上で吹きさらされていることが誰にも実感されて来ている。
中国、朝鮮、日本などのように、封建的な社会の風習と、資本主義社会の苛酷な婦人の労働力に対する搾取とが重なりあっているところでは、特に婦人のすべての重荷と悲運が、婦人問題としてだけでは解決されない。日本の社会そのものが、根本から変ってゆかなければ、口さきや文学の上の議論だけでは男の生活も――女の生活も――人民の生活は、どうにもならない。大衆が現実にきょうを生きている経済事情、その劣悪さから湧き立って世間に溢れている犯罪と社会悪。婦人の問題、そしていまの日本のおそろしい青少年の問題。すべてが、現在の社会の矛盾、或い
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