は、ひびわれの間から発生している。いまのままの社会状態では、われわれが平安に生きることのできる日は一日もない。これは、こんにち、占領下の日本に特権というものをもっていない、すべての人が感じている。
 資本主義社会の悪として生じているあらゆる問題の正当な解決の見とおしは、資本主義社会そのものの全体の発展――社会主義社会への見とおしなしにあり得ない。たとえそれが、どういう言葉によってあらわされているにしろ、この実状も、あらゆる人に予感されている。ソヴェト同盟の社会主義社会の建設について、疑いぶかい人たちも、日本に近い中国で、「あのシナでさえ」人民の新生活がはじまっている事実については、無関心であり得ないのだ。
 すべての婦人にとって、また男にとって、きょうの実際問題は、占領下のこの日本の実状のもとで、日本という列島がその島々ごと戦争にまきこまれはじめているこのきょうのなかで、各人の人間男女としての努力はどのようにされて行ったらいいのだろう、ということである。

 一九四五年八月十五日から、こんにちまで日本のわれわれは、日本の民主化というものが、どんな風に推移して来たかを、まざまざとその身で
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