戦争はわたしたちからすべてを奪う
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)風《ふう》がわるい
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)くすぐり[#「くすぐり」に傍点]の調子
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この一冊の本は、わたしたちに何を告げ、何を教えているだろう。この本のあらゆる頁が語っている。女性が、封建社会から近代資本主義社会へと、人間らしい生活を確保しようとしてたたかって来たたたかいは、どのように複雑であり、かつ歴史の長い時期にわたった事業であるかということを。そして、女性も人間であろうとするそのたたかいは、十九世紀から二十世紀のはじめにかけての、男子に対する婦人の権利の拡張(女権運動)から発展して、こんにちでは、世界各国の人民男女として、男女が互に扶け合い、生活関係と政治を、より多数のものの幸福のために運営する可能を見出してゆこうとする時期に到達していることを、この本の各項の研究と報告とが告げているのである。
したがって、きょうのわたしたちは、単なる婦人運動者であり得ないし、婦権獲得運動者でもあり得ない。自分ひとりの幸福についても、考えつ
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