戦争と婦人作家
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地付き]〔一九四八年六月〕
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これまでの日本はいつも天下りの戦争にならされていました。天皇制の封建的な、絶対的な教育の下で、人民は戦争を「思惑の加った災難」として、無批判に服従してきました。
そして今日の破局に到りました。日本に戦争反対の心がなかったかといえば、小田切秀雄の「反戦文学の研究」をみてもわかるとおり、いつもときの戦争に反対した人道的な精神はありました。天皇制の権力はそういう文学を非国民の文学とし最近の数年は治安維持法でとりしまりました。外国の人々は日本の婦人が、あれほど惨酷な戦争に対して何一つ組織立った抵抗をしなかったことに、おどろいています。日本人はそこまで惨酷なのかという誤解を抱いてさえいます。しかしその人々は日本の封建的社会の中で、愛情の表現も、憎悪の表現も、社会化することを許されなかった日本の悲劇を理解しなければなりません。日露戦争のとき大塚楠緒子が、「お百度まいり」という作品をかき、与謝野晶子が「君死に給うことなかれ」
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