という詩をかいて戦争の惨酷に反対したことは有名です。しかしこの二つの代表的な婦人の手による戦争反対の作品は、日本の文学史に全文をのせることさえはばかられていました。与謝野晶子の詩が発表されたとき大町桂月が非国民だと言って当時の『明星』を大批難しました。
 最近の十数年間に、日本の婦人作家はどんな戦争反対の活動をしたでしょうか。今日になってみると侵略戦争に反対したモチーフをもっている作品は、例外的にわずかで、吉屋信子、林芙美子そのほかほとんどすべての婦人作家が、むしろ戦争に協力した悲惨な事実が発見されます。しかしこれらの人すべてが侵略戦争を心から賛美していたとするのはあやまりです。ジャーナリズムの統制がきびしくなり軍御用の作家でなければ作品発表がゆるされなくなったとき、ブルジョア出版社の出版からの収入でそれぞれ「有名な婦人作家」として存在している人々は、自分のジャーナリズムの上の存在を保つためと、読者から名がわすれられないためにも、いつも華やかな場面につき出ようとしました。つまりきわめて安定のない婦人の経済的自主性を守りつづけてゆくために、彼女たちにとっても疑問が感じられたにちがいないフ
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