い考えをもって居たと思ったら……ほんとうに何ですよ――」
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Hは、
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「それで幸福だったら私はよろこんでましょう、けれ共そうじゃないんですの、――横がみやぶりであんたやって来たって事ですもの。会う人ごとに白い眼でばかり見られる、そんな事を今までされた事はない女でしたもの大した苦痛なんです。今になってよく母親なんかのところに不愉快な気持を書いてよこすそうですが――暗い穴の中に出られないほど落ちてしまってそこで涙をながしてもがいてる様にもうどうにもならない事になってしまったんですからねえ、……それに思いがけなく今日会ったんです。おが[#「おが」に「(ママ)」の注記]った身なりをして居ながら死人の様な顔をしてネエ」
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Hは低くはなしながら部屋の中をうなだれて歩いて居る。
千世子は涙をぼろぼろこぼしながら、
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「マア何ていやな人なんでしょう、私が若し貴方だったらどんなにほんとに呪ってやるかわかりゃしない、どうしてそんな人が生きて居られるんでしょうねえ……」
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と自分の事の様
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