一字が思う様に出て来なかった。
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「どうせ一日か二日すれば会うんだから……」
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 こんな事を思ってうす青のライティングペーパアを原稿紙ばっかりのかみくずかごの中に点を打った様にコロッと一つなげ込んだ。
 一番おしまいの紙くずをなげ込んだ時、
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「千世子さあーん」
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 Hが呼んだ。インクにふたをして居ると、
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「うたいたいんですよ」
[#ここで字下げ終わり]
と又どなる。
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「行きますからまって……」
[#ここで字下げ終わり]
 手の甲をせわしくシュシュとこすりながら、
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「あれひくんです、あれ」
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 Hがこう云っただけで千世子は Adieu を弾いた。Hの声がいつもより倍も倍もきれいにきこえた。「お天気のせいだ」千世子は斯う思って丸味のあるその声に頬ずりしてやりたいほどに思えた。
 ひき終えて二人はかおを見合わせてわけもなくかるく笑った。
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「いつも弾いてもいいうただ」
[#ここで字下
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