破らないじゃあ気のすまないくせのある千世子は幾度も幾度も紙反古を作ってはあてもない方へなげつけて居た。
 そうしてようやっと書きあげてよみ返したときにはそんなに気に入った手紙じゃあなかったけれ共母親が来てこのわきに何かそえ書きをするかさもなくば千世子の名のわきに自分の名をかくまでまって居た。下で主婦とここいらの地価の話をして居た母親は笑いながら下から上って来た。
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「おや何を書いたんだえ」
「Hさんのところへ――阿母さんよんで見て何か御書きんならなくっちゃあならないんなら書いて下さいナ花のしぼまない内に出したいんだから……」
「Hさんとこへなんか手紙なんか出さずともいいじゃあないかわけもないのに――それに先達ってこっちに来るとすぐ葉書を出したのにうんともすんとも云って来やしないじゃあないか、だものそんなにしずとも……」
「何にも返事が欲しくて書くんじゃあありませんわ、書きたくなったから書いたまでの事なんですもの」
「一体男なんかに手紙をやるなんて事は不賛成なのさ」
「ちゃんと書いたものはお見せするしそうして出すんなら何にもわるい事じゃないじゃあありませんか、御まけ
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