たのしい気持で思って居た。若い女がだれでも感じる様に旅に出る前夜のわけもわからないワクワクした感じにとらわれて居た。
その晩は安眠する事が出来ないで早く眼をさました時、母親や女中達はもうコトコトと何かして居た。寝間着のまんま千世子は自分でかたをつけなければならないものに手をつけ始めた。
すき見されるのを案じる様に千世子は書いたものの入って居る文庫に鍵をかけ、出て居るのを皆本箱にしまって妙にガランとした部屋の中をひっこしをする時の様な目つきをして見て居た。
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「千世ちゃん入れるものはもって来るんだよ、もうすっかり私達の方は出来たんだから……」
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千世子は斯う云われるともう一週間もかかってきめて置いたものでありながら何となし不安心な気持がしてあっちこっちとせせったあげく、入りもしない書きぬきなんかをつまみぬいてヨチヨチした神経質な目つきをして母親にケースの中につめてもらった。大急ぎで部屋にかけもどっても、何にもする事のない千世子はポカンとあてのない目つきをして庭の何となしほんがりした空気の中に段々と青くなりまさって居る葉の輝きなんかを見な
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