「Hさん、まだ悲しいかおをしていらっしゃる?」
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 戸の外からこえをかけた。
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「いいえ、いらしゃい笑ってますよ」
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 Hはまるで異った心持になったらしい声で立[#「立」に「(ママ)」の注記]く云った。
 戸をあけた時Hは千世子の心を見て何も彼もしった様に笑った。
 二人はピアノの前に座ってソナタを弾いたり、ゴンデサードを弾いたりしてかるい気持になって居た。
 夕はん一寸前に父親がかえって来た。元気のみちて居る目をしてHのかおを見るなり、
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「ヤア、御いででしたね、けっこうです」
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と大きいこえでいかにもうれしそうに云ってかるく腰をまげた。
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「とうとう又一日御厄かいになりました」
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 さっきの事なんかなかった様にHさんは笑って居た。Hが、
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「私はいけないんですから」
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と云うのを無理にのましてうすい葡萄酒によわされてねむがって居るのをつかまえて、父親はうたをうたうやらしゃべる
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