#ここで字下げ終わり]
なんかと半分ひやかしの様な調子に云った。不愉快な気持をこらえこらえして家にかえると茶の間ではHの笑い声がして居た。思いがけない事の様に千世子は母親にあいさつをしてからHのかおを見た。
[#ここから1字下げ]
「奥さんもとめて下さる――晩までとおっしゃるからどうせ今日はひまなんだからそうする事にきめたんです」
「だれでもがよろこぶ事ってすワ」
[#ここで字下げ終わり]
 千世子はあんまり芝居めいた言葉だと自分でおかしくなってうす笑をした。
[#ここから1字下げ]
「一寸マア、この頃やたらに露国の脚本によみふけって居るんでまるで科白みたいな事を云う事があるんですヨ、面白うござんす家で芝居のただみが出来るんですもの……」
[#ここで字下げ終わり]
 千世子は小さな子供のする様に一寸くびをまげてHを見て笑った。
[#ここから1字下げ]
「マア、ようござんすヨ、毎日を芝居にして暮していつまでも居られやしないんですものネエ」
[#ここで字下げ終わり]
 Hはこんな事を云いながら遠いところに去ってしまったものをおっかける様な目つきをした。
[#ここから1字下げ]
「夕飯にはお
前へ 次へ
全192ページ中109ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング