九)」は縦中横]
三月の末Hの仕事がすんで蓬莱町の家にかえる様になった。その頃千世子は又頭の工合が一寸変になって居たせいか、やくにも立たない書きぬきに夢中になって毎日毎日かんしゃくをおこしながらあくせくあくせくして居た。机にとりとめもなく本を並べたててキョロキョロして居たり、いそがしくもないのにいそがしがって夜更けまで鉛筆をけずったりして居た。
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「一週に二三度はきっと上ります近いんですものネエ」
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Hはあしたかえると云う日にこんな事を云った。
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「そんな御約束はしない方がいいんですワ、もしそれが出来なかったら下らない気持にならなくっちゃあならず、御つとめで来る様になっちゃあ御しまいですワ」
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楽譜をうつして居た千世子はピアノの上にペンをなげ出して、うんざりした様にHの顔を斜に見て居た。
「何にも悲しむほどの事じゃあない」と思いながら気が重かった。Hはかわいた目をしてかたよせられた製図台と自分の買って来た花の鉢を等分に見て居た。
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「つまらなくなったら一日中に二度な
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