まらなくうれしい様な事は一つもなかった、こんな事を思って居た。
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「私が行く、皆がだまったまんま私のかおを見つめながら一人一人平手でソーッと丁寧に頭をなぜて行ってくれる。だまったまんま、かおを見、だまったまんま考え、だまったまんまお互の心がわかって笑う時に一所に声をあげて笑ったらさぞマアうれしい事だろう」
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帰りには仲の良いK子と一緒にかえった。少しつかれて居た千世子は電車の中でかるい目まいがしてK子によろけかかった。
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「どうして?」
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K子はいつものふくみ声で内気らしくきいた。
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「何ともないの、一寸」
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小さな言葉つきで云ってかおを見合せて二人は一緒に笑った、意味もなく無意識に出た笑い――それが千世子には今までになかった――家にかえってもわすられないほどの快さだった。
それから毎日毎日千世子は考える事のない様なかおをして学校に出て四時頃かえっては本をよんだり書いたり、Hとうたをうたったりして暮して居た。
(九)[#「(
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