う様にすてて行った女。
斯う思うと、憎しみ、怒りのかたまりになってそのまだ見た事もない女の顔はとてつもないきたないものになって目の先にちらついた。
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「にくらしい人ですねえ、何てまあ……、私と同じ女と云うもんの中にそんな人のあるのを思うと私はどうしていいかわからないほどになっちゃいますワ、ほんとうに……」
「何にもお前に関係のある事じゃあないじゃないか」
「そうには違いないけど阿母さんそうお思いなさらない?」
「ほんとうにどんな血とどんな脳髄をもって居るんでしょう、犬だって猫だって食べない肉をもってるんでしょう」
「いけませんでしたネエ、貴方のいらっしゃるところでするべき話じゃあなかったんですけど、つい……」
「は、一寸感じるとこうすぐ変になっちまうんですから……」
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あんまり亢奮した千世子は二人の話して居る事をぼんやりと遠くの方にきいて居た。
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「あんた、ほんとうに可哀そうな方ねえ、どうしてそんななんでしょう、あなたがさっきおっしゃった事大変気に入っちゃったんです、きのうより倍もすきな方になってしまった」
[#こ
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