あすこ。
「私の事なんかより早くあっちで何をしてたんだか御話しなさいよ。
 ほんとうにまあそんな見っともない処でどうして居るんだろうとよく思って居たんです。
 でもまる一月ですもの。
 よく辛棒《しんぼう》した。
「何をするしないもあるもんですか。
 あんな処に貴方が私位居たらほんとにどんなだろう、話すのさえいやだ。
 それよりか私あさって[#「あさって」に傍点]っから西の方へ旅に出かけなけりゃあならないの。
「どうしてそんなに急に?
「何故だか知らないけどそうなったんだもの。
[#ここで字下げ終わり]
 京子は伯父と一緒で一月ほどの予定である事や只遊ぶのが目的だと云った。
 先から思って居る事だから嬉しいとか何か好い事が自分を待って居る様な気がするとも云った。
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「貴方は遊びに出かける方だから好い様なものの、私は一人ぼっちでお留守番だ!
[#ここで字下げ終わり]
 あんまりいそいそして居るのが不愉快な様でなげやりな口調で千世子はそう云ってかたい笑方をした。
 帰って来てから相談する事があるとか考えてもらいたい事があるとか云って、
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「いく
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