「彼の人の云う事も思って居る事も私には一寸も分らないんです。此頃なんかは困って仕舞う事ばっかりでねえ。
 今の学校ももうじきに出るんですしこの先をどうしたらいいか、又貴方のお父様の御力でもかりなくっちゃあねえ。
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などとグドグドこぼして千世子にまで相談した。
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「この間の休に毎日毎日四角なすじのある紙に何か書いて居ましたから『何をおしだい』ってきいたら小説とかを書いて居るって云いましたっけが、暮しに困りさえしない様ならその小説屋さんにしても当人の好む事ならとも思ってねえ。
 お金になりましょうかねえ。
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 千世子は何だか体中がムズムズする様だった。
 金持になりたい人が小説屋さんになるのは間違って居る□□□[#「□□□」に「(三字不明)」の注記]偉いものになったから一人手にお金持になる事はあるかもしれないけれ共金持になりたいのが目的ならだめだ。
 千世子は大伯母がわかるまで廻りくどく七くどく話した。話をきいた大伯母がげんなりした様に、
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 それなら、その小説屋さんとか云うものもいけず、ねえ。
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