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と云ってグタグタといつもの様に首を振った時何ともつかない面白い様な可笑しい気持がして笑が喉元にグイグイとこみあげて来た。
そんなにこの大伯母に心配をかけるに十分なだけ信二もまたかっちまりのない風にゆれる夕顔みたいなノコンとした気持で居た。
別に仕たい仕事もこの世の中には無い様に云って居た。
生涯の目的が定まって居ないからこれから先行く学校は自分でも分らず親類の者の考えで蔵前を受けて誰でもが予想して居た通りの結果で選抜されるほどの頭も鬼っ子で持って居なかった。
或る学校の補欠の試験を受けるつもりで当人は居るけれ共身内のものは皆あやぶんで居る。
もうまるで大人になった体をもてあました様に柱によっかからせてついこないだから着始めた袖の着物の両袂に手を突込んで突袖をして居る様子は「にわか」の由良《ゆら》さんを十倍したほど下品に滑稽で間抜けに見えた。
千世子が歯がゆい様に眉《まゆ》をピクピクさせながら、
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貴方、何か好きな事はないの、そうやってたって仕様がないじゃあありませんか。
大伯母さんはそりゃあ案じてなさるのに。
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