用もないし又只友達でなみなみにつき合って居る分ならなどと千世子は思って居た。
 その晩千世子は両親の容貌の美醜によって子供の性質に幾分かに変化を与えられると云う事が必ず有りそうで仕様がないと話した。
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「ほんとにきっとあるんだろうと思う。
 あるらしい気がする。
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 そんな事を云って眠りたがる母親を無理に起して置いてしゃべりつづけた。
 来る毎度に肇がぶちまけた話をする様になったと云うのはたしかである。
 けれ共千世子の読む物、書くものに対して一歩もふみ込まない事がいかにも快い事の一つであった。
 親切な保護者に両親はなるべきもので監督者にはなるもんじゃあない。
 保護者として自分が思うのはあながち両親ばっかりと限ったわけでもない。
 その人の云った事なら千世子は心から満足して随う事が出来る。
 けれ共監督者には随っても心からではない。
 そうは云うけれども真の保護者と監督者がどんなに違うかを味わってからでなくっては云える事じゃあない。
 千世子はよく他処《よそ》の親の話が出たりすると母親に話したり肇になんかも一寸云った事もあった。
 家内
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