忘られない様な見開いた眼と長い「えり足」を持って居る人だったけれ共横から見る唇がたるんでシまりなく下《さ》がって居たので一目見ただけで千世子の心の喜びはあとかたもなく消えると、今まで美くしいと思えた人が堪らないほどみっともなく思う様になった事があった。
美くしくもなく勝《すぐ》れた頭を持って居ると云うでもない京子と気まずい思い一つしずにこの久しい間の交際[#「交際」に「つき合」の注記]が保《たも》たれて居るのは不思議だと云っても好い事だった。
千世子とは正反対にただ音無しい京子の性質と何でもをうけ入れやすい加型[#「加型」に「(ママ)」の注記]性のたっぷりある頃からの仲善しだったと云う事が千世子と京子の間のどうしても切れない「つなぎ」になって居たばっかりであったろう。
一言一言を頭にきいて話す頭の友達が出来そうなど云《い》う事はその人が何であろうとも千世子には快かった。力のある満ち満ちた生き甲斐のある生活を好《す》いて居る千世子にとって自分の囲《まわ》りをかこむ人が一人でも殖《ふ》えると云う事が嬉しかったし又満足されない自分の友達と云うものに対しての気持を幾分かは此人《このひ
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