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「何だい?
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 肇も同じ窓からのぞいた。
 二人とも無言のまま千世子の様子を見て居た。
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「いつもよりきれいだねえ、
 どうしてだろう。
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 しばらくたってから肇が口をきいた。
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「日光《ひ》の差し工合だって女の人は奇麗に見えるよ」
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 そう云いながらも篤は千世子から眼をはなさなかった。
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「呼ぼうか。
「お止めよ、
 斯うやって居る方がいいもの。
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 二人はまただまって二つの首をならべて居た。
 いきなり二人は頭を引っこめた、そしていたずらっ子僧の様に忍び笑いをしながら、
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「見つけたねえ、きっと。
「見つけたとも、そりゃあ、
 こっちを見て笑ったもの。
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 二人は可笑しさを堪えかねた様にして隅っこの椅子によっかかって戸の開くのを待った。
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「いついらっしゃったんです、
 さあっきっからあすこに居たんですか。
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