は、渾名をつけることの名人である。兵隊も渾名をつけることはうまい。どんなしかつめらしい髭を生やしていても彼等から渾名をつけられることは避けられない。渾名は大衆的な批判である。青年が渾名をつけることの名人であるという一つの事実の中に、隠されている大きな真理がある。その事実の中に、自からの批判力によってこそ青年は未来をつくる、歴史をつくるといわれる必然があるからである。
 五十になった時、一冊の本さえ読まないじじいでも、十六の時、十八の時、せめて一冊の講談本は読んでいるだろう。少し真面目な若者は、人生の拡がりを自分のものとしたいと思って、読書をねがう気持は痛切である。自分の仕事に必要な技術をたかめようとして専門書を求める気持も痛切である。然し、紙は青年の向上心のために配給されていない、本屋の儲けのために配給されている。基本的な食糧、賃金、住居の問題から文化の面まで日本ではすっかりやりかえられて人民の幸福のために運営されるようにしなければならない。
 こうしてみると、青年の生活にとって特別な関係ある問題は、左をみれば婦人の今日の社会における種々の問題とキッチリ結ばれているし、右をみれば所謂お
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