青春
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蜥蜴《とかげ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年三月〕
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青春の微妙なおもしろさは、その真只中にいるときは誰しもそれを、後で思い出のなかでまとめるような形ではっきり自覚しないまま、刻々を精一杯によろこび、悲しみながら生きてゆくところにあるのではないだろうか。人間の精神のなかで青春というものの在りようもまたおもしろく微妙で、あながち年の若さということにだけ、根をおいているのでもないらしいのも興味ふかいところだと思う。中年と呼ばれる時代のなかにはらまれている青春。老年のなかにも不思議に蔵されていて輝く青春。そういうものもあることがわかる。そして、そういう青春が生活力として或は創造力として意外につよいもので、人類のよろこびといい得るような仕事をした人々の生涯は、いつの時期も、それぞれの姿でしかも青春といい得るものを持ちつづけたように見える。若いというだけの青春で終るとすれば、それは悲しいものだと自分の身につけても思われるわけであろう。
いろいろなひ
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