逝けるマクシム・ゴーリキイ
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)留《ルーブリ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)二十|哥《カペイキ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)嘗てあった[#「嘗てあった」に傍点]ことである。
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 一人の人間として最も誠実な心から人類の生活の向上と発展とを信頼し、そのために永い困難な芸術家としての努力を捧げたマクシム・ゴーリキイの六十八年の輝きある生涯は、この六月遂に終った。
 ゴーリキイは、ロマン・ローランなどと共に今日の世界がその人を持っていることを誇る偉大な芸術家の一人であるが、特にゴーリキイはその名を聞いたとき人々の心に一種云うに云われぬ暖かさ、親しさを感じさせ、終局に於て人類は不合理や穢辱に堪えきれるものではないのだという単純なはっきりとして楽しい確信を湧き起させる力をもっているのは何故であろうか。私はこの男らしく而も優しい偉大な人生の一選手がどんな苦痛や歓びをもって自分の時代と境遇とを生きぬき、芸術家として老いて猶且つ永遠に若い生命力の源泉となり得
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