生きるための恋愛
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地から1字上げ]〔一九四七年七月〕
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 こういう質問が出ることはわたしたちに深く考えさせるものがあります。ブルジョア雑誌は毎号かかさないように新しい時代の幸福とか恋愛とか結婚の問題をとりあげて沢山のページをさいています。『アカハタ』にはぬやま・ひろしの「大うけだった恋愛談義」という見出で記事がのりました。それらの恋愛論はそして結婚論は今日こういう問が出てくることに対してどういう責任を負うのでしょう。幸福というものはできあい品となってヤミ市に売っているものではありません。わたしたちを不幸にしている今日の現実の社会の矛盾と闘って人間らしい生活を組立ててゆこうとしている、その建設のうちにわたしたちの感じる幸福と幸福への途があります。
 女性の古い抑圧がとりさられて自分の判断で結婚の相手をえらび、また恋愛をする人間らしい自由が日本の社会にもだんだん実現してくるということは、自分で働き自分で人生の道を進んでゆく力のない昔の女が、どうせ愛情もなしに結婚す
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