生きるための協力者
――その人々の人生にあるもの――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九五一年二月〕
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 だいぶ古いことですが、イギリスの『タイムズ』という一流新聞の文芸附録に『乞食から国王まで』という本の紹介がのっていました。著者は四〇歳を越した一人の看護婦でした。二〇年余の看護婦としての経験と彼女の優秀な資格は、ロンドン市立病院の一人の看護婦である彼女を、人生のいろいろの場面に立ちあわせることになりました。行路病者として運びこまれた乞食の臨終に立ちあった彼女は、その優れた資質によってイギリス国王の病床にも侍しました。乞食であろうと国王であろうと、人間の病気とその苦悩、治癒と死の過程は、ひとしく人類の通る道です。しかし、病気そのものは一つでも、それをとりまく人生の道具だては、同じロンドンの空の下で、乞食と国王とでは何たるちがいでしょう。『乞食から国王まで』の著者は、社会のどん底から、てっぺんまでを看護婦として通ってみて、人間とその病気とが、人生の何を語るかということを書いた本で
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