メーデー。それから、メーデーに勤労者は自分たちの意志と希望とを表現するものであるということを、その歌声の響のなかにもはっきり示した去年のメーデーの雰囲気。今年五月一日に、私たちみんなはどんなこころで、町から村から工場から、と歌うのだろう。
 真面目な、いくつもの思いがある。第一、おととしのメーデーのスローガンであり、去年のメーデーにも主要なスローガンの一つであった働けるだけ食べられるように、という切実な要求は、今年のメーデーに、どんな新しい表現をもってあらわされるのだろう。
 何故なら三年の間に最も重要なこの生活問題は解決されなかった。
 インフレーションはとめどがなくて、千八百円ベースは、現実の生活で規準にも何にもならなくなって来た。そこで、春さむい三月下旬のいま、新しく二千九百二十円の水準に向って、全勤労階級が種々な方法でその新給与の実現をもとめている。二千九百二十円で、二千四百カロリーはとれない。去年十二月下旬日本銀行の紙幣発行高は、凡そ二〇〇〇億円であった。この二千億という紙幣を百円札で八割、十円札二割とすると、面積六六万平方キロ。長さ八二万キロで地球のまわりの長さの二十倍。高
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