、ソヴェト文学は世界の関心にたち現れているのである。二十世紀のはじめピータア・クロポトキンがボストン大学で「ロシア文学の理想と現実」という有名な講義を行った。その当時の内容では、とても予想されがたかった達成が、ソヴェト文学の本質となりつつあるのである。
 ジダーノフの堂々として正確な、心情に訴えるソヴェト作家への忠言は、わたしたち日本の作家からみれば、まだまだソヴェトの作家の独自性のよろこびと自覚とにたいして、ひかえめの注意しか喚起していないとさえ感じられるのである。ソヴェト作家が、ソヴェトの人民国家の諸経験、諸成果、痛苦なその失敗から学び、描き、物語らないで、どこに彼らの創造的情熱の源泉がありうるだろう。ソヴェト作家は、ソヴェト人民国家の一員である以外にありようはない。この現実のうちに、かぎりない未来の達成と今日の未完成とがあり、文学の生粋なモティーヴがある。そこに作家が生きている社会は、過去のどんな社会の模倣でもないとき、作家がどうして、旧いもの、おくれたもの、足の萎《な》えたる文化の模倣をしなければならないのだろう。そこの社会こそ人間らしい立体的人間性の発展のためにつくしているの
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