もののあることが理解されたが、マルセル・プルーストは、単なるエクゾチシズムでよまれるのだろうか。潜在意識の世界に文学をうちたてようとしたプルーストたちのイギリスでの後輩ヴァージニア・ウルフの生と死とは、私たちに、現代ソヴェト文学の道とプルーストの道がどこかでつながっているものとして理解しがたかった。「スクタレフスキー教授」の作者の心理主義の傾向に、こういう外国文学との近似性が感じられるにせよ、ソヴェト社会は、その構成と運行の基本をフロイド風の「無意識」の決定権にゆだねているのではないのだから、作品もリアリティーにおいて分裂し失敗している。リベディンスキーの作品「英雄」が一九三〇年前後のソヴェト大衆から逃げ場のない批判をうけたのも、彼が新しいおもちゃとしかけた心理分析の興味とそれによる失敗のせいであった。
シーモノフは若い強壮な肉体と精神をもち、人生をたのしむ力も学ぶ力も大きい作家だと思われる。日本へ来て、モスクワへ帰ってすぐアメリカへ行った。シーモノフのような作家がアメリカの社会生活を経験するということは非常に有益である。彼自身のために、またソヴェト社会とその文学のために。なぜならば
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