史は、世界的に進出している日本について或る程度までふれている。世界史のどの舞台を見ても日本は見当らなかった過去の在りようと、この点は大変ちがって来ている。けれども、私たちは自分が生れ、そこで一生を閲《けみ》し、そこに死ぬる故国としての日本については、世界史との関係の中で更に一層細かに具体的に知りたい心をもっている。
この要求に立って考えて見ると、世界史と各国の歴史との扱われかたが、従来の文化の中では何と機械的であったろうかと愕《おどろ》かれる。世界史は何となく常にヨーロッパ、アメリカ等を中心として語られて来ていたし、各国史としての日本史はその反対に世界史との横の結合なしに自家製に語られて来ている。その中に入ると、歴史的現象は次々へ繰りひろげられているけれども、歴史的現象のその奥に横わっている筈の真の社会的条件の推移にまでふれては理解のてづるが与えられていないのが常だった。
日本文化史総論(遠藤元男著・三笠書房・日本歴史全書第一巻、定価〇・九五)は、そういう世界史との横の感覚も常に保ちつつ、先ず日本の社会と文化の項で、時代、地域、社会、民族と文化の関係を説明し、日本の文化の姿相と性格
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