との項で原始時代から今日と明日の文化までを考えている。ただ明日の日本の新しい文化を、ますます民族的であるだろうと予想しつつ、その特性を農村的であるだろうと断定している著者の見解は、今日の日本のものの考えかたの或る形ではあるけれども、必ずしも永い未来にわたって文化の進行の現実の諸条件を全面的にとらえた結論であるとはいえない。このことは、おそらく著者も承認されていることであろうと思う。
同じ歴史全書の日本原始文化史(樋口清之著)があり、日本近代史(小西四郎著)があり、明治の新社会の生成過程を語っている。この小さい日本近代史を中心として、私たちは巻末にあげられている参考文献表の中から、「明治維新」(羽仁五郎著・岩波書店・日本歴史所収)や「新日本史」(竹越与三郎著)などを選び出して読むことが出来るし、日本評論社が出版した「明治文化全集」(二十四巻)も折々の有益な資料として記憶しておくことは便利であろう。
「日本経済史概要」(土屋喬雄・上下二冊岩波全書)は、日本文化が経済条件の向上推移につれて変化して来たその土台について語っている興味ふかく学ぶところの多い本であると思う。この本に沿って、三笠書
前へ
次へ
全22ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング