世界は求めている、平和を!
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九五一年一月〕
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 二十世紀の後半の第一年―一九五一年がわたしたちの良心の前にひらかれた。昨年の六月二十五日、朝鮮に動乱がひきおこされて以来、日本では世界平和に対する一部の人々の確信がゆらいだ。一九四九年から、南北統一のために努力しつづけていた朝鮮の人々の間に、どうして戦争がひきおこされたのだったろう。こんにち、朝鮮についてわたしたちは客観的に信じるに足りるだけの真実を開かれていない。
 やがて歴史が新しい頁を開くとき朝鮮で演じられているドラマの事実は世界に明らかにされるだろう。
 誰でも知っているとおり、つい先頃(十一月十六日)ポーランドのワルソーで第二回世界平和擁護大会が開かれた。第一回大会のとき七十余ヵ国が代表を送った。それにもまして、今回は八十ヵ国を越える国々から平和の代表が参集した。ヒロシマ、ナガサキの経験を持つ日本の人々は何一つ罪ない人民をみな殺しにした原子兵器が世界のどこでもまたと使用されることがないようにストックホルムのアッピールへは数百万の人々が署名した。五億を越した署名の数のうち資本主義の国としては世界第三位になっている。自分たちが戦争の犠牲であることを自覚して来ているのである。イギリスの母たちは、「わたしたちの息子は大砲の餌食ではない」と書いたプラカードを立てて整列した。
 現在、地球のいくところかで戦争行為が行われている。けれども、世界の声は、何を叫んでいるだろうか、平和である。
 国連は、いろいろの矛盾に苦しみながら世界平和と戦争回避のために努力しようとしている。わたしたちは、さまざまの偽瞞から国連の人類のための平和の努力を救い出してゆかなければならない。なぜなら、国連に参加している国々の内部にも、第三次世界大戦の口火をつけようとして公然戦争を挑発している人たちがいるのである。もし必要ならば、それらの人々の名を明示することもできる。こんにちの世界で、どこの国の人民に対しても、原子兵器を使ってそこの重要都市を破壊し、住民をみなごろしにしてやるがいいというような暴言をはくものは、あからさまな戦争の火つけ人である。日本のわたしたちが国連を支持するとならば、それは国連の良心を支持し、
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