活の安定を確立させるためには、男子とともにすべての必要な行動に入って行く、と実行にうつった点にこそ、新しい意味がある。
今日の辛酸にやつれている母たる妻たちは、こういうものごとの考えかたはあまり遠大で、理想倒れだと思うかもしれない。それよりも、目前の一枚の冬着を、とはげしく求める感情もあるであろう。しかし、私たちは、よくよく思いひそめなければならないと思う。この二月の総選挙のとき、ある種の婦人たちは、参政権よりは、やすい薯《いも》の方がありがたい、と言葉に出していった。目の前の欲しさを強調した。そのために、すべての保守的な政党の立候補者たちは、食糧だけは引きうけると公約した。婦人立候補者たちは、あれほどくりかえして女のことは女にこそわかり思いやれるのだから、婦人の辛苦を解決するためには婦人代議士を、と演説した。そして、婦人たちの投票を集め、金もちと地主の集った政党を多数党にした。世界でおどろくほど一時にどっさり婦人代議士を選び出した。
彼女たちは、長い長い会期の間に、何を婦人のために解決しただろうか。女の苦労が集注している孤独な母たり妻たるひとの心からなる一票に、どんな現実をもって
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