いて絶対に克服されなければならない人間的な損傷と社会的矛盾である。その意味で、民主国では、この社会的な課題は、男女をこめて、明日のより条理そなわった社会建設に志す人々にとって、提出されている総括的な課題の一部分として扱われているのである。なぜなら、健康人の社会生活が安定であって、はじめて、病人の生活も保証される。順調な家庭生活の社会的基盤さえも失われている社会で、どうして不幸が根絶されるだろう。
民主的進展の速いヨーロッパ諸国で、この大戦後、婦人の政治的・社会的発言が強くなった必然は、ここにこそある。未亡人という文字は単調だが、それを実質づける多種多様な立場の孤立した母、妻たちが、現代の歴史のあらゆる角度から、人間らしい生活の再建の可能を確保しようと歩み出し発言していることは、日本の私たちとして、真剣にくみとるべき態度だと思う。現代の世界の未亡人の歴史的な意味は、これら老若幾千万の女性たちが、自身のはかりしれない涙と不幸との理由をしっかり人類の進歩の中に理解した、というところにある。第一次欧州大戦の後のように、婦人として平和を希望する、というような弱々しい心情から歩み出して、平和と生
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