なはっきりしたところはなくて、やっぱり通っている。これから通うからには、そこで知ることの出来ることだけは、確に自分のものとして感ぜられるようにやって行こう。そして、戯曲の勉強を本気にやるのだ。本気にやるということは、つまり結婚すればあきらめるという、そういうこととしてではなく、結婚のこともそれに応じたこととして考えるという方向でやって行くのだ。こうやって暖く少し重くおとなしく母の肩にもたれかかっている自分の精神の裡に、音も立てず飛躍が行われていることを感じて、杉子は不思議な心持がした。こんなにぴったりくっついていて、こんなに心が親愛にみたされていて、それで母でない自分の一生というものは自分だけにしかないという事実は、何と不思議だろう。
丁度次の土曜日が伊田のグループの集りの日にあたった。
杉子は新しい積極な気持で、その集りに出た。相変らず言葉すくなくそこに加っていることは同じ心でも、今の杉子はそこにある雰囲気よりもそこで本当に語られることは何かということを理解したいと思うのであった。
伊田が近代劇の発生の歴史について書いたものを読んだ。
五時ごろ解散になって、杉子と伊田は神田で
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