思われるほど、彼女を崇拝した。しかし三年たってP牧師が休暇帰国して来たときには、快活な牧師夫人を伴っていた。やがて、時が経つうちに、次々と新しく若い女教師も来るようになり、C女史は小さなとある胡同《ホウトン》の家に移った。「そこで彼女は一匹の小犬を飼い、幾株かの花を植え」「春の日は花の下に坐し、冬は煖炉にうずくまって、心情は池水のように、静かに、小さく、絶望的で、一生はこうして終ってしまうのだと、自ら悟った様子でした」
 そこへ思いもかけず、学者の孤児となった淑貞《シューチョン》がひきとられ育てられることとなった。彼女は「柳の花のように」C女史の「感情の園生に飛びこんだ」
 十年の間C女史の身辺で、「あたかも静かな谷間の流れのようであった」淑貞はC女史にとって「天使のような慰め」である。中国を心から愛し、評価するC女史は、淑貞を、教養深いが純粋な中国の女性として育てあげて来たのであった。
 十八歳で女学校が終ったとき女史は淑貞をつれてニューイングランドの故郷の家へ戻った。もし淑貞がニューイングランドを好きならば、そちらの大学に入れてもよいと思ったのである。
 どこへ来ても、淑貞のはにか
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