なくわびしい。
此頃は只クルクルとまるめて真黒なピンでとめて居るばかりだ。
結ったって仕様のない様な気がする。
若い年頃の人が髪《かみ》をおろす時の気持が思いやられる。
ピッタリと頭《あたま》の地《じ》ついた少ない髪を小さくまるめた青い顔の女が、体ばっかり着ぶくれて黄色な日差しの中でマジマジと物を見つめて居る様子を考えて見ると我ながらうんざりする。
毎朝の抜毛と、海と同じ様な碧色の黒みがかった様な色をした白眼の中にポッカリと瞳《ひとみ》のただよって居る私の眼は、見るのが辛い様な気がする。
白眼が素直《すなお》な白い色をして居ない者は「□[#「□」に「(一字分空白)」の注記]持」だと云うけれ共私もたしかにそうなのかもしれない。
時々、此の青っぽい白眼も奇麗に見える事があるけれ共、此頃の様なまとまらない様子をして居ると、眼ばっかりが生きて居る様な――何だか先《す》ぐ物にでも飛び掛りそうに見える。
弟が「どら猫」の眼の様だと笑った。
ほんとうに此頃は「どら猫」の生活をして居る。
眠りたいだけ眠り、気の向いた時食べ、そして何をするでもなくノソノソ家中歩き廻って居る。
それ
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