、斯うして居る自分が情《なさけ》なくなって来る。そうした人達が羨《うらや》ましい様な、ねたましい様な気がする。
それかと云って、厚着《あつぎ》をして不形恰《ぶかっこう》に着ぶくれた胴《どう》の上に青い小さな顔が乗《の》って居る此の変《へん》な様子で人の集まる処へ出掛《でか》ける気もしない。
「なり」振りにかまわないとは云うもののやっぱり「女」に違いないとつくづく思われる。
こないだっから仕掛《しか》けて居たものが「つまずい」て仕舞ったのでその事を思うと眉《まゆ》が一人手に寄《よ》って気がイライラして来る。
出掛ける気にもならず、仕たい事は手につかず、気は揉《も》める。
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「どうしようかなあ。
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馬鹿らしい独言《ひとりごと》を云って机の上に散《ち》らばった原稿紙《かみ》や古《ふる》ペンをながめて、誰か人が来て今の此の私の気持を仕末《しまつ》をつけて呉れたらよかろうと思う。
未だお昼前だのに来る人の有ろう筈《はず》もなしと思うと昨日《きのう》大森の家へ行って仕舞ったK子が居て呉れたらと云う気持が一杯《いっぱい》になる。
いつ呼んでも
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