譲原昌子さんについて
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)民主的になってゆくはず[#「民主的になってゆくはず」に傍点]
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 三月十五日に発行された文学新聞に、無名戦士の墓へ合葬された人々の氏名が発表されていた。そのなかに、譲原昌子という名をみたとき、わたしははげしいショックをうけた。今年の一月十二日に亡くなられたと書いてある。一人の家族もなくて、遺骨の処置が新日本文学会に相談されたと書いてある。譲原さんが死んだ。わたしが深いショックを感じたのは、去年の一月、二人でNHKから民主的文学について対談を放送したことがあったからであった。それから去年の夏、わたしが身体をわるくして東京にいられなかった間に、譲原さんから手紙がきていて、その返事をうちの人が出しておいてくれた。そういうことがあったからだった。譲原さんというと、わたしにはNHKで会ったとき、あの人の着ていた紫っぽいちりめんの羽織を想い出す。それから録音にとりかかる前、二人で話しあっていたあいだに、びっしょり汗をかいた譲原さんを想い出す。その時、譲原
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